研究概要 |
本年度は近代初頭から現代にいたる空間的外部の意識にかかわる文献資料を収集し,整理を行った。さらにヒューウェルやチャーマーズが関わった19世紀中葉の「世界の複数性」論争を調査し,その内容を検討した。また,従来指摘されてこなかった,イギリス経験論の内部に組み込まれている「外部参照性」の問題を,トマス・リードの自然観,道徳哲学,方法論を検討することによって解明することを目指した。 以上の目的のために本年度は、国内での文献資料の検討とともに,11月から12月にかけてアバディーン大学図書館等で、トマス・リードの草稿類およびr世界の複数性」論争にかかわる海外資料調査を行った。またアジア地域との18世紀の同時代性を探るために,国際18世紀学会のセッション「東アジアと啓蒙」(2003年8月)を主催し,韓国側研究者との交流と意見交換を行った。 以上の研究の結果として、以下のことが明らかになった。 1 空間的外部の哲学的意識化はフランス啓蒙の先駆者フォントネルに始まり、リベルタン的な自己相対化の試みに宇宙論的な背景を提供していたが、17世紀イギリスの科学思想の中でキリスト教と融和していった。 2 19世紀の複数性論争の中では、それは来世における救済の保障と考えられていた。 3 空間的外部に呼応する論理的「外部性」は、信仰主義疑論の論法と結びついて、イギリス経験論の重要な枠組みを構成していたと考えることができる 本年度の研究成果の一部は,「11」に挙げた論文および著書として公表した。
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