(1)日本環境思想史の課題を明確にするため、邦訳された文献を中心に1960年代以降の欧米の環境思想史研究の整理を行った。例えばシューマッハー『スモールイズビューティフル』(1973=76、86)、パスモア『自然に対する人間の責任』(1974=79)、ナッシュ『自然の権利』(1989=93)等が言及しているような、環境共生的な非ユダヤ・キリスト教的、非近代的諸思想への期待に、肯定的にせよ否定的にせよ日本環境思想史研究は応えなければならないのである。 (2)日本環境思想史を構成する諸思想に関連する資料収集及び調査を行った。主なものは次の通りである。陶山訥庵関係-観音の里歴史資料館(滋賀県高月町)、海保青陵関係-山口県立文書館(山口市)、大原幽学関係-大原幽学記念館(千葉県干潟町)、南方熊楠関係-南方熊楠記念館(和歌山県白浜町)。 (3)日本思想史資料の精査・研究を進め、日本環境思想史の具体像を描きつつそれにふさわしい資料を選択・抽出した。現時点では次のように日本環境思想史を構想している。開発が反省されるようになり、農業生産力の拡大を耕地面積のいたずらな拡大ではなく単位面積あたりの収穫量の増大に求めるようになる17世紀を起点をして(思想家としては例えば熊沢蕃山)昭和戦前期を一応の終点として(思想家としては南方熊楠)考え、さらに荻生徂徠、石田梅岩、安藤昌益、大原幽学、田中正造等の思想に注目している。
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