韓国における近代儒教改革運動の分析は、西洋近代思想が与えた影響だけでなく、中国の「西学」から被った影響、日本の植民地統治からもたらされた影響も考慮する必要があるとともに、なぜ韓国近代儒教改革運動が宗教化していったのかをも明らかにしなければならない。 本稿ではこうした課題に答えるために、まず前近代の韓国儒教を特徴づけてきた李退溪から実学派の李星湖・丁若〓に共通する「心学」的特徴を整理し、次にそうした心学的傾向を持つ韓国儒教が、「西洋の衝撃」以降どのような思想的変容を被りながら自らを変革していったかを、朴殷植・李炳憲・崔南善の儒教解釈を分析対象にして明らかにした。 「西洋の衝撃」を被った東アジア各国にとって、西洋列強の軍事的・思想的侵略に対抗できる「近代的アイデンティティ」の創出こそ最重要課題であり、それは「近代的思惟」と呼ぶにふさわしい思想的営為であった。韓国における近代的思惟の展開は、李退溪以来の「心学」的伝統の再生によって近代的アイデンティティを創出することに成功し、儒教を宗教化させ、宗教運動にまで発展させることによって、近代を生き延びる儒教のあり方を発見した。儒教の宗教化がなければ、韓国は近代化の過程で民族のアイデンティティを発見=再構築することはできなかったのであり、この意味において、韓国近代儒教改革運動は必然的に「宗教化」せざるを得なかったと考えられる。
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