本研究は、17〜19世紀の民衆の対外観検討のための基礎的作業を行っていくことを目的として推進されたものである。具体的には、大韓民国(以下韓国)・中華人民共和国(以下中国)の研究者と緊密な連絡を取りつつ、日本・韓国・中国における17〜19世紀の儒学・民俗信仰・民衆宗教を中心とした文献を収集し、分析し、同時に東京・名古屋在住の日本人研究者、在日韓国人研究者、韓国側研究者(東西大学校日本センターや韓国宗教文化研究所のメンバー)、中国側研究者(北京日本学研究センターや中国社会科学院のメンバー)と共同研究会を開催し、当該テーマの分析・研究の深化をはかってきた。これと並行して立命館大学において研究会を開催し、17〜19世紀民俗信仰・民衆宗教に関する文献、諸史料を収集し、対外観を中心とした分析、意見交換を行った。平成15年度においては、17〜19世紀における韓国・中国の民俗信仰に見られる対外観に関する現地調査を北京・上海・ソウル・釜山等で実施し、文献や史料を収集し、最終年度の平成16年度には、成果のまとめを完了し、合わせて研究成果の刊行に努めてきた。この間の研究の結果、知識人層・民衆の対外観について、17世紀については明清王朝交代を軸として展開し、18世紀には各中華主義(日本中華主義・朝鮮中華主義など)が広汎に影響を拡大すること、さらに19世紀には西欧の接近に伴う世界システムと華夷秩序の相剋過程として捉えられることはほぼ明らかとなった。本研究は、戦後の民衆思想史・民衆宗教史研究の成果を土台として、この間急速に成果を挙げている東アジアの比較宗教史研究と連携しながら、民衆レベルでの対外観について、民衆思想・宗教思想に着目しながら、まずはその基礎的構造について明らかにしようとするものであるが、所定の目的は果たしたものと考えている。
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