研究課題/領域番号 |
14510064
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
内田 正博 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (10151888)
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研究分担者 |
岡田 暁生 京都大学, 人文科学研究所, 助教授 (70243136)
藤野 一夫 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (20219033)
三木原 浩 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (70116177)
伊東 信宏 大阪教育大学, 教育学部, 助教授 (20221773)
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キーワード | メロドラマ / シャンソン / 楽劇 / オペレッタ / オペラ / 映画音楽 / マイヤベーア / サロン音楽 |
研究概要 |
本年度は計3回の研究会を催した。第1回は4月14日に伊東信宏が、レハールのオペレッタ『ジプシーの恋』を巡ってメロドラマにおけるエクゾチスムについて発表した。第2回は7月7日に藤野一夫が、『ポルティチの物言わぬ娘』と『恋はご法度』を中心にメロドラマ的なものと政治的なものについて発表した。第3回は9月2日に岡田暁生が、メロドラマ的音楽の形式分析のためのカテゴリーについて発表した。また、研究分担者各人が国内の諸機関で情報収集と意見交換を行ったほか、次に述べる様な海外における調査・資料収集・交換も行った。まず、岡田暁生が、平成15年12月10日から20日までチューリッヒの中央図書館にて19世紀フランスの音楽雑誌及びグランド・オペラの資料を調査し、グランド・オペラの同時代における受容についての知見を得た。次に、三木原浩が、平成16年2月6日から20日までパリのオペラ座、ウィーンのオペラ座等でオペラ、オペレッタの実地調査並びに資料収集を行った。こうした共同あるいは単独の研究・調査を通じて、岡田は、グランド・オペラに見られるメロドラマの構成原理を明らかにし、この原理が19世紀の器楽音楽にも通底する面があることを指摘した。伊東は、オペレッタとメロドラマの劇作術が並行関係にあることを、『ジプシーの恋』を具体例に取り上げ明らかにした。藤野は、メロドラマ的劇作術を、台本スクリーブ、作曲オーベールになる『ポルティチの物言わぬ娘』に着目し分析、近代ヨーロッパの芸術と社会がいかにメロドラマ的構造に相互依存してきたかを明らかにした。三木原は、シャンソン『さくらんぼの実るころ』をバックグランド・ミュージックとするジャック・ベッケル監督の映画『カスク・ドール』が、歌詞のみならず、映像の表象するものがいかにメロドラマ的仕掛けの上に成り立っているかを明らかにした。内田は、メロドラマという言葉の本来の意味を再確認した上で、その概念が、19世紀を通して、次第に「劇形式」から「劇内容」へと変容していった様を歴史的に跡づけ、その延長上に20世紀のメロドラマの主役舞台「映画」の登場の必然性を明らかにした。
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