3年計画の研究の第2年次である2003年度は、前年度に続いて(1)文献資料の収集、(2)写真資料の収集と整理、(3)関連論文の執筆に当てた。 (1)文献資料の収集は以下のものを中心に行われた。 (1)1876年のモローのサロン出品作《出現》の同時代批評 これは具体的には19世紀の新聞や雑誌に掲載されたサロン展の批評であるため、国内ではほとんど入手が不可能なうえ、記事名やページ数なども不明なため、実際にパリの国立図書館でマイクロ化された資料を逐一閲覧し、収集した。 (2)事故死したオルレアン公フィリップに捧げられたサン=フェルディナン礼拝堂のアングルによるステンドグラスおよびシェフェール案、トリケッティ作による彫刻に関するもの。特に前者に関しては、2002年に開催された展覧会カタログ、後者に関しては1990年に開催された展覧会カタログが有意義であった。 (2)写真資料の収集は11月のパリでの調査の際に以下の二つを中心に行われた。いずれも内部の装飾などの複製化された写真が乏しいため、機材を持ち込んで隔壁面や彫刻などを直接撮影した。 (1)ノートル=ダム=ド=ロレット聖堂 (2)サン=フェルディナン礼拝堂 これらについては、その鮮明さからポジフィルムを使用したが、順次デジタル化して整理する予定であり、現在その画素数やデータベース化のための試験的なフォーマット作りを試みている。 (3)関連論文の執筆に関しては、現時点では残念ながら研究ノート的なものと、口頭での発表(於國學大學)とに留まっている(11の研究発表を参照)。いずれもモローの《踊るサロメ》(通称《刺青のサロメ》、1876年頃から、ギュスターヴ・モロー美術館)に関するもので、前者では一見刺青のように施された線描のイメージ源を確認しつつ、それが喚起する効果について考察した。後者においては前者の議論をふまえつつ、イメージの二重化という点に焦点を当てた。
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