平成16年4月に調査をおこなった個人蔵四条河原遊楽図屏風(岩瀬文庫寄託)を分析し、平成16年11月に岩瀬文庫において研究報告をおこなった。この作品は従来紹介されている四条河原遊楽図とは、画面構成、景物の配置などの点で異なり、近世初期に流行する四条河原図のなかで独自の位置を占めている。本作品については、平成17年度中に論文としてまとめる予定である。また、平成16年8月には、日韓美学会において、狩野元信の大徳寺大仙院花鳥図襖絵について、そのモティーフ選択や構図を東アジア美術の流れのなかに位置づける発表をおこなった。そこでは、日明貿易・日鮮貿易により輸入された珍禽が絵画化される経緯を分析した。この内容については、平成17年度内に論文として刊行される予定である。さらに、新出の個人蔵源氏物語図屏風について研究し、16世紀までの源氏絵の伝統とは異なる側面を指摘し、17世紀初頭の制作であると論じた(『人文』掲載論文)。その他、狩野永納筆天神図(舞鶴市大泉寺)、狩野常信筆韃〓人狩猟図屏風(兵庫県大乗寺)ほか、個人所蔵作品の調査をおこなった。これらの作品についても調査結果をとりまとめている過程である。 平成16年9月には北京で、故宮博物院、中国博物館その他に所蔵されている中国絵画を調査した。ここでは、16世紀の日本美術に影響を与えた中国明代の花鳥図・山水図を中心に調査をおこなった。
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