本年度は研究テーマに関連する研究書、情報等の収集を主眼とし、ヨーロッパならびにアメリカの近・現代美術に関する文献・資料のうち、「イコノクラスム」に関連するものを中心に集め、それらの一部を検討した。具体的には、バーネット・ニューマンの展覧会カタログ、アド・ラインハートに関する文献などで、ニューマンについてはロンドンのテート・ギャラリーで行なわれたバーネットニューマン展も実見した。また、ドイツ語圏の美学関連文献を中心に、画像ならびに画像否定に関する文献も補充し、近代における画像否定を研究するにあたって不可欠なユダヤ関連文献も補充した。本研究においては特にユダヤ的偶像忌避に焦点を当てる意図はないが、近代美術(史)の成立においてユダヤ人の果たした役割は決して過小評価できないので、本研究の重要な部分になるであろう。 その他、美術館の近代化計画、建築などについての研究も収集中であるが、まだ不十分であり、来年度、重点的に収集、検討したい。 初年度でもあり、まだ研究成果の発表は本格的に行なっていないが、モンドリアンとデザインに関する論考一本は近日中に刊行の予定である。『越境する造形』(仮題)という図書の一章として書いたもので、本のテーマは芸術とデザインの関係に焦点をあてたものだが、モンドリアンの建築観には、装飾はもちろんのことあらゆる素材の物質性までも拒否する徹底したイコノクラスム的発想があり、より本格的に踏査すべき研究対象であることも明らかになった。
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