研究概要 |
本年度は、学術振興会の特定国派遣でポーランドのワルシャワに滞在して研究する機会を得た。ワルシャワ、ならびにユダヤ研究所は、本研究にとっても重要な拠点のひとつである。モダニスト・イコノクラスムというものが、同化ユダヤ人の「教養」Bildungの理想と密接に関わり、また、ユダヤ人の偶像忌避と関わっているという意味においても、また、モダニスト・イコノクラスムを推進した批評家や美術史家などの多くが、ポーランド、リトアニアなどの東欧圏出身であるという意味においても、この地域に研究の拠点を一時的にでも置いて研究することは大きな意味があった。 研究成果報告書に収めたAICA VII International Congress, Warsaw 1960."L'art-les nations-l'univers"は平成16年11月16日にワルシャワの美術史家協会でおこなったワークショップでの口頭発表である。1960年にワルシャワで開催されたAICA(国際美術批評家連盟)国際会議ならびにそこで展開された「モダンアートの国際性と国民性」についての議論について論じたものである。モダンアートが各国家の国民性という《イコン》を破壊せずに維持するものだという合意とりつけるために行われたかのようなこの会議は、本研究に深く関わるものである。なお、この研究発表を機会に、ワルシャワの国立美術館に眠っていたAICA国際会議関係の資料の所在がわかり、この閲覧許可も得た。その成果は本報告書には盛り込むことは出来なかったが、本年5月に主催するシンポジウム「越境/モダンアート」で発表する予定である。
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