今年度はパウル・クレー、マックス・エルンスト両者の造形を比較する前提として彼らの本格的出会いである1925年のパリにおけるシュルレアリスム系展覧会の状況をつぶさに検討した。その際、研究代表者はベルン、チューリヒ、ヴェネチアのグッゲンハイム美術館などに収蔵されている未公開資料を当該諸機関の協力の下で収集分析、更に大分県の別府大学、広島大学図書館などに収集されている稀少雑誌を参看することで、クレーとエルンストの関係が、これまでのいずれの資料で紹介されるものよりも遙かに濃密だったことが了解された。特にエルンスト側からのクレーへの関与は、シュルレアリスム総帥アンドレ・ブルトン、詩人のポール・エリュアール、画家のアンドレ・マソン、ジョアン・ミロらのクレー理解を飛躍的に進めるものとして、シュルレアリスム史、乃至は20世紀西欧絵画史の極めて重要な「事件」であることが具体的資料に基づいて立証できた。
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