研究課題について、平成15年度は、(A)高麗美術館所蔵の「熾盛光如来降臨図」、(B)大阪市立美術館所蔵の「五星二十八宿神形図」、(C)京都府・真輪院所蔵の「北斗曼茶羅図」(奈良国立博物館寄託品)、(D)東京芸術大学大学美術館所蔵の「唐本北斗曼茶羅図」の4点の星曼茶羅関連作品について調査ならびに写真撮影を実施し、主に図像の特色について考察をおこなった。(A)は昨年度も調査をおこなった作品であるが、地色を朱色とした擬似金泥のような独特の彩色手法に特徴があり、類例との比較検討をおこなうため、赤外線で再度写真撮影をおこなった。(B)は星曼茶羅におけるインド的な要素を考える際の基本作例であり、「胎蔵図像」や「胎蔵旧図様」などとの比較検討をおこなった。(C)は近年発見された新出の星曼茶羅で、上部に北斗七星を描いており、北斗曼茶羅における北斗七星の重要性を改めて確認した。(D)は白描による図像で、北斗曼茶羅と熾盛光曼茶羅の図像上の違いを明確に示す重要な作例であり、高麗美術館や大阪府・宝積院、あるいは大英博物館やパリ国立図書館などが所蔵する熾盛光如来の同様の図像との関連を考察した。このほか、平安時代後期から鎌倉時代前期における星曼茶羅の彩色や切金の技法を研究するための情報を入手する意味から、画題は異なるが、大阪府・大黒寺所蔵の「阿弥陀浄土図」の写真撮影をおこない、表現技法の比較検討をおこなった。それらの研究成果の詳細については、平成16年度の報告書でまとめる予定である。
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