星曼荼羅の構図の特徴を宗教的な観点と科学的な観点の双方から分析し、構図を決定する要因が何であるかを解明するため、現存する各種星曼荼羅の調査をおこなった。中尊の性格と星曼荼羅の他の構成要素の役割を理解することが問題を解明するための前提であるため、それぞれの構成要素の図像的な特徴を把握できるよう、個別尊像ごとに写真撮影を実施した。信仰の対象としての制約などから、当初予定していた主要星曼荼羅や重要関連作品のいくつかについて、調査や写真撮影の許可を得ることができず、星曼荼羅というジャンル全体を俯瞰できるだけの情報量を入手するまでには至らなかった。しかし、鎌倉時代以前に制作された星曼荼羅の数例については、中尊をはじめ、北斗七星、九曜星、十二宮、二十八宿などの基本構成要素を一尊ごとに写真撮影して得られたフィルム原板をもとに、画像データベースを作成し、それにより星曼荼羅の構成要素のそれぞれについて、持物、着衣、体色、姿勢などの情報を得ることが可能になったことは本研究の大きな成果である。その一部は研究成果報告書に掲載している。それら各尊像の図像的な特徴に関する細かなデータ解析は現在途上にあるが、構成要素を見る限り、東密と台密の広範な交流の実相が予想される。現時点での研究成果をより実りあるものとするため、未撮影の遺例について画像データの収集・更新を継続すれば、その延長線上に星曼荼羅の構成原理を明確化する展望が開かれるものと考えられる。
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