研究概要 |
平成14年度は、順応パラダイム(刺激変化パラダイム)を用いて、表情認知に特異的な事象関連電位(ERP)の計測を行った場合、笑顔および怒り顔に対してP310成分(頂点潜時が310msecの陽性成分)がCz(頭蓋頂点)を最高振幅として特異的に生起し、この成分が表情認知に特異的な成分である可能性が高いことを、日本心理学会第66回大会(2002)および生理心理学と精神生理学(2002)に発表した。これに続いて、平成15年度は、順応パラダイム(刺激変化パラダイム)を用いて、真顔から真顔(先行する真顔と異なる)、真顔から笑顔および怒り顔(先行する真顔と同一顔)、真顔から笑顔および怒り顔(先行する真顔と異なる顔)の3条件においてERPを計測し、P310成分のみでなく、顔の符号化に特異的と考えられいたP170成分にも表情の変化が明瞭に現れることを明らかにし、Neuroreport (2004,Vol.15,911-914)に発表した。空間周波数を操作し表情にマスキングをかける条件におけるERPの計測が不十分で課題を残したが、継続して実験を行う。 研究分担者の北海道大学大学院教育学研究科の室橋教授との共同研究として表情変化に伴う光脳血流反応(NIRSによる)の計測を行ってきた。真顔→笑顔→真顔→怒り顔→真顔→真顔→怒り顔→真顔→笑顔、といった一種のオドボール・パラダイムを使って、表情刺激を中心視野および左右視野に提示した場合のNIRSの計測を行い、表情刺激が中心視野に掲示された場合NIRSの変化は小さく、左右視野に分割して提示した場合にNIRSの変化は著しく増大すること、さらに表情刺激の掲示時間が長いほうがNIRSの変化が大きいことを見出し、2004年5月に開催される日本生理心理学会大会において発表する。NIRSの加算が課題であるが、NIRSの時間分解脳および反応の大きさとの関係で難しく、脳波計にトリッガー信号とともに取り込むという形で加算を行うことを考えて、施行を重ねている。
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