研究概要 |
インコ・オウム目に属するセキセイインコの音声コミュニケーション行動を,神経行動学的に解析した。雌のセキセイインコを防音箱の中に入れ,同種の雄のSongを聞かせ,認知的情報処理を行っている脳の部位を検討した。特に前脳に焦点を絞り,最初期発現遺伝子Zenkの産生物であるZENKタンパク質(ZENK)の発現を指標として検討した結果,fields L1 and L3,caudomedial neostriatumに,ZENKの発現が観察された。このことから,同種のSongに特異的に応答するニューロンの存在が,視床-終脳系聴覚伝導路のこれらの部位で明らかとなった。このことは,昨年報告した,高次聴覚関連野(neostriatum caudale pars medialis;NCM)ニューロンと刺激Songの複雑度に応答する神経系が前記の脳部位にも存在する事を示唆するものである。 キンギョは,縞模様を用いた傾き弁別課題において傾向方略と傾角方略を使っているらしいことを前年度で明らかにした。そして、45°/135°の弁別が可能であったことから、傾向情報だけでも弁別が可能であることを示した。もしキンギョが傾き刺激の弁別で2つの方略を使うのであれば、個体によって利用しやすい方略が異なるのではないか、という疑問が生じた。本年度は、これを明らかにするために、次の実験を行った。最初に30°(右下がり:水平に対する角度(傾角)。以下同じ;誤刺激)と120°(左下がり:傾角60°;正刺激)の弁別を十分に獲得させた。次に、これまでに使われてこなかった刺激60°/150°(傾角30°)の弁別訓練を実施した。もし各被験体が傾向方略にしたがって弁別を行っているのであれば、その個体は150°刺激を選択するはずである。もし傾角方略に従って弁別を行っているのであれば、60°刺激を選択するはずである。しかし結果は、どの被験体もどちらかの方略を固定的に使うことはなく、使い分けを示すことはなかった。
|