研究概要 |
本研究では,生活環境における音と映像の協和感に着目し,その協和感を中心として音と映像の印象の相互作用を検討することを目的とした。 刺激として,我々が日常生活で遭遇すると思われる環境(音と映像)を8種類選んだ。音と映像が合っているかどうかの指標として協和感を用い,環境の総合的評価を測る指標として満足度を用いることとした。被験者10人に,音と映像を同時に呈示して,音の印象,映像の印象,協和感,満足度を7段階のSD尺度で評定させた。 評定結果を集計し,因子分析を行ったところ,第1因子,第2因子としてそれぞれ美的因子,迫力因子が抽出された。 続いて,協和感を中心として音と映像の相互作用を検討するために,共分散構造分析を行った。因子分析によって得られた各因子の因子得点と協和感の評定値との間に双方向のパスをもつ構造方程式を構築し,解析したところ,適合性の高いモデルが得られた。 そのモデルを解釈したところ,音と映像の協和感は音の印象との間で因果関係(直接効果)をもっている可能性が示唆された。すなわち,音の美的因子が高くなれば,協和感が高くなり,さらに協和感が高くなれば,音の迫力因子が低くなることが示唆された。よって,生活環境において,音と映像の組み合わせが適切であるかどうかという判断は,音が大きな要因になっていると考えられた。 さらに,環境全体に対する満足度を考慮し,同様に共分散構造分析を行った結果,先のモデルで得られた直接効果以外に,音の美的因子から満足度への正の因果関係,および音の迫力因子から満足度への負の因果関係も見られた。すなわち,音の美的因子が高くなれば,満足度が高くなり,一方,音の迫力因子が高くなれば,満足度が低くなることが示唆された。
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