研究概要 |
宮岡は,対象表面の滑らかさ・粗さを触ることによって知る触微細テクスチャー知覚について研究し,「振幅情報仮説」を提唱した.この仮説が正しいなら,触覚系はローパスフィルタ特性を持つはずである.本研究は,このローパスフィルタ特性を調べることを主目的とした.また,微細テクスチャー知覚に深く関与すると考えられる,皮膚への接線方向振動を検出するシステムについても調べた.本年度の研究内容について以下に説明する. (1)ローパスフィルタ特性のモデル化と実験:まず,ローパスフィルタ特性の数理モデルを作成した.このモデルによれば,触覚系がローパスフィルタ特性を示すなら,心理測定関数に特定のパターンが観察される.モデルと平成14年度の実験結果を比較した結果,両者はかなり近似していた.また平成14年度の実験をさらに精密に実施する目的で,指を正確に動かすための運動制御装置を作成した.この装置を用いて実験を行なった結果,モデルと一致する結果が得られ,触覚系におけるローパスフィルタの存在が裏付けられた. (2)接線振動検出閾測定実験:本年度は,皮膚表面に対し接線方向に振動する刺激を用い,接線振動検出閾を求める実験も実施した.その結果得られた検出閾曲線は,刺激周波数が50Hz以下の場合,皮膚へ垂直振動を提示して得られた検出閾曲線と勾配が異なっていた.50Hz以下の垂直振動検出閾にはFAIが関与している.そこで,接線振動検出閾曲線パターン決定に関与する機械受容単位を同定するため,高低2種類の皮膚温度条件下で,接線振動検出閾を求める実験を行なった.その結果,50Hz以下の部分で,高低両2条件の検出閾値間に統計的な有意差が観察された.皮膚機械受容単位のうち,皮膚温が下がると感度低下を起こすものはFA IIとSA IIの2種類である.FA IIは50Hz以上の振動検出に関わっているので,50Hz以下の接線振動に関与する機械受容単位はSA IIである可能性が強いと結論された.
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