研究概要 |
漢字二字熟語の認知過程に,その類似語(当該単語と一文字だけが異なる単語)が影響を及ぼすことが示されているが,漢字二字熟語においては,その類似語との間に形態的類似のみならず,意味的類似をも想定することができる.漢字二字熟語の類似語間の意味類似性の高低が,漢字二字熟語の類似語間で認められる促進的効果に影響を及ぼすか否かを検討するためには,当該漢字二字熟語の類似語間での意味類似性に関するデータベースが必須となる.本研究では,こうした類似語を対にして被験者に呈示し,その意味類似性に関して被験者の主観的評定を求めることにより,類似語間の意味類似性データベースを作成した.天野・近藤(2000)のデータベースから,JIS一種に含まれる2,965字のうちの二文字によって構成され,かつ普通名詞であると見なされている漢字二字熟語を頻度順に上位1,000番まで抽出し,これを基本語彙と見なした.これらを,まず前漢字を共有する熟語群に分類した.こうした熟語群は前漢字を共有する類似語群ということになる.同様の処理を後漢字の共有に注目しても行った.これらの熟語群内で,熟語二個のすべての組合せ(熟語対)が作成され,その結果2,530組の熟語対が作成された.これらを23種類のリストに分割し,質問紙調査の形式で類似性についての主観的評価を求めた.被験者として大学生1,133名(男子387名,女子745名,不明1名)が調査に参加した.被験者の平均年齢は19.5歳(SD=2.4)であった. 各漢字二字熟語について,その類似語間での平均意味類似性評定値が算出された.この結果は報告書としてまとめ,また第3回日本認知心理学会において発表予定である.今後こうしたneighbor間の意味的類似性が,実際に当該漢字二字熟語の処理過程に影響を及ぼしているのかどうかを,実験的に検討することが望まれる.
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