エラー!加齢による心身の機能低下を補うために高齢運転者が身につけていると考えられる「補償的運転行動」について、面接調査、シミュレータ実験、実車走行実験よって検討した。 1.面接調査 高年齢者10名(61歳〜77歳)に、面接調査を実施した。対照群は、中年齢者群(39歳〜58歳)7名、若年齢者群8名(30歳未満)であった。高年齢群が意図的に行っている安全確保行動は、以下の通りであった。 (1)急がない、速度を出さない。 (2)夜の運転、特に雨の日には運転を控える。 2.シミュレータ実験 自動車シミュレータ運転中にカーナビを操作させる2重課題実験を実施し、カーナビ操作成績、運転パフォーマンスなどを高年齢者群2名と若年齢者群2名で比較した。高年齢者群は、若年齢者群に比して、カーナビ操作の所要時間が長くミスも多かったが、車速は安定していた。NASA-TLXのRTLXスコアは高年齢者群で一貫して高かった。通常の運転操作に付加的な操作を要求する運転支援システムは、高齢運転者には不向きであることが示唆され、今後より慎重な検討が必要があることが示された。 3.実車走行実験 非意図的な「補償的運転行動」の実態を測定するための、自動車挙動・交通状況同時記録システム、車間距離測定システムを構築し、一般道における走行実験を実施した。 高年齢運転者にとって問題があると思われる交差点における運転行動を取り上げ、視認行動を中心に、高年齢者群、若年齢者群の比較を行った。高年齢者はサイドミラーでなくルームミラーによって後方を確認する行動が特徴的であった。これは首の回転の困難さや、視認時間延長を補償するための非意図的な運転行動であると考えられる。 以上の結果を、ミッコネンらの運転行動ヒエラルキーモデルに即して分類し、高齢運転者の支援方策の基本理念を検討した。
|