衝動性行動は目標性志向性行動の障害の一つである。衝動性行動の神経機構を理解するために、"良い報酬を得られること"と"悪い報酬を得られること"との間の報酬期待や行動の違いを検討することは重要である。そこで遅延期間のある時間反応課題をサルに行わせながら、前頭眼窩野からニューロン活動を記録し、報酬期待に関係する自発発火活動の性質を調べた。この課題は試行において報酬が得られるか否かを示す手がかり刺激を提示した。四つの連続した試行を一ブロックとし、三種類の好みの異なる報酬と無報酬を一定の順序であたえた。手がかり刺激前の前頭眼窩野ニューロン活動には、報酬期待に関連する二つの活動タイプが観察された。ステップタイプニューロン活動は特定の報酬試行にむかって手がかり刺激前活動をステップ上に増加あるいは減少させた。特定の試行とはブロック内で最も好むあるいは最も好まない試行であった。プリフタイプニューロン活動はそれぞれの試行における報酬の好みに応じた手がかり刺激前活動の変化を示した。ステップタイプニューロン活動は長期の報酬期待に関係し、プリフタイプニューロン活動は短期の報期待に関係すると考えられた。前頭眼窩野は二種類の報酬期待プロセスを基盤にした特定の(長期あるいは短期)の報酬にむかって動物のモチベェーションレベルを調節する働きで、目標志向性行動の発現に重要な役割を果たしていると考えられた。前頭眼窩野が障害されることによって生じる衝動性行動を含む目標志向性行動の障害は、長期と短期の報酬期待の調節がうまくいかないことにより生じると考えられた。
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