幼稚園に通う3歳〜6歳児396名について、担任の保育者および親の双方から自己抑制的、あるいは自己主張的な行動の出現や頻度について評定を求めた。またこの中の一部の子どもについては、評定項目にあるような実験場面を設定し、行動観察を行って実際の自己制御の様子を観察することを試みた。 先行研究と全く同一の調査項目は採用できなかったため、自己主張、自己抑制それぞれについて総得点ではなく平均得点を算出し、教師評定と、柏木(1988)のデータ(幼稚園教諭の評定)とを試験的に比較したところ、平均得点自体に大きな差異は認められなかった。その後、今回のデータで横断的に自己主張、自己抑制の年齢的変化を調べたところ、自己抑制は年齢と共に高まってゆくが、自己主張は3歳から6歳まで目立った変化がないことが示された。柏木(1988)では自己主張が3〜4歳で伸びるとされていたが、2002年に取った今回のデータでは、その伸びも認められず、この間に自己主張は伸びないという結果となった。これは教師評定においても、また今回取った親評定においても同じであった。また自己抑制については、教師が発達と共に伸びていくと評価しているのに対し、女児の親だけが自己抑制の伸びを認めないということが示された。女児に対する性役割的な期待の高さが、親の評価基準を高くしているのか、それとも教師が評定する際に性役割ステレオタイプに合う女児の行動を拾いやすいのか、今後より詳細に検討したい。 幼児本人に対しては、葛藤場面を用意し、ぬいぐるみを用いて実験を行った。対象となったのは親と教師の双方から評定された幼児のうち、50名である。この中で幼児は相手(言うことを聞いてくれる優しい相手か、遊びを妨害する怖い相手か)により、自己主張するか、抑制(がまん)するかといったストラテジーを決めている様子が観察された。
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