研究課題/領域番号 |
14510118
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
坂本 幸 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (40004113)
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研究分担者 |
松下 淑 皇學館大学, 社会福祉学部, 教授 (50023966)
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キーワード | 聴覚障害幼児 / 視覚的伝達手段 / 視線・注意の誘導 / 相互交渉発達 / 動作記述・分析 / 視覚的情報の提示方略 / 日本語習得 / 図表と文字の関係 |
研究概要 |
1.共同研究1:幼児期から日本語と手話の両方を使用しているろう学校幼稚部〜小学部1年の授業と自由遊び場面の縦断的VTR記録、3年分計51時間の共同合議による記述と分析を行った。定量的特性の詳細はまだ分析中であるが、聴覚障害幼児達の自発的な相互コミュニケーションは5歳代で急激に増えている。幼児同士のコミュニケーションは手話中心、健聴教師や健聴の親には「対応手話+指文字」と相手によって明確な使い分けがあり、自由遊びでは合議でルールを決めての協同遊びが成立している。しかし、自発的交渉での表現はいずれも短く素早いやりとりであり、小1までに日常的な文の読み書きは獲得されているが、以後の二次的ことばへの継続的指導の必要と、手話を基本にした日本語指導における動詞の活用形や助詞の用法の指導法の検討の必要が示唆された。 幼稚部の手話から「かな」文字への指導では、絵や手話と単語のマッチングだけでは不十分で、幼児の一文字毎の確認と文字のつづり順への注意誘導の媒体、および記憶媒体として、指文字が有効であることが確認できた。 2.共同研究2:幼稚部では聴覚障害教師の授業を中心に、集団で自分の考えを発表し討議する活動がなされているが、この活動の継続は二次的ことば習得のためにも必要と思われる。健聴教師と聴覚障害教師の授業では、集中度をはじめとして幼児の反応差が見られ、今後、音声を除いた情報の機能について詳細な分析が必要なことが判って来た。視線の誘導方法や、注意を引き、それを保持する方略の違いは、健聴教師が無意識的に音声に頼ることによる視覚情報提示の体系性や論理構成の結果的な貧困によると考えられるが、定量的裏付けはまだ充分でない。 3.坂本は大学レベルの講義の要約筆記とOHP、VTR、パワーポイントの3種の視覚教材の併用で理解実験を行い、これら媒体のコピーや記述資料の手元配布の効果を確かめた。事前配布すれば効果はさらに高い。 4.松下は図表と解説文の視覚同時提示条件で、音声解説の有無の差による視線の動きについてアイカメラを用いて調べ、視線の動きに系統的な差があることを見出した。現在、定量的な検討をさらに継続中である。 5.朱は、絵本の読み聴かせ場面における聴覚障害幼児群と教師の相互交渉の過程を分析し、絵の効果と物語の理解について調べ、内容把握が挿絵の解釈の範囲をあまり超えていないこと、集団内の相互交渉が充分に機能していないことを見出し、手話があまり使用されていない場合の相互交渉の経験不足がその原因であると示唆した。
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