思春期に夜型化の生活パターンが進むこと、また、生活パターンの乱れが心身の健康に悪影響を及ぼすことはこれまで、多くの研究により指摘されてきた。生活パターンの夜型化や乱れが何を原因として生じているのかについては明確ではないが事あるごとにテレビやインターネットが槍玉に挙げられてきた。しかし、こうした議論は必ずしも客観的な証拠に基づいて行われているわけではない。そこで、我々は大学生を対象にして、「生活時間」に関する調査を実施した。5月と7月に大学1年生、7月に2年生以上を対象として行い、学年の進行に伴う変化を追跡できるようにした。クラスター分析を応用して生活のパターンを分類した結果、深夜2時以降まで起きている「夜型」の大学生の割合はおよそ4割であったが、深夜時間帯の過ごし方として「テレビ・ビデオ」などの視聴をしていた者はそのうちの2割程度(全体の1割足らず)に過ぎず、この事実からもテレビ・ビデオが夜型化の主要因と考えることは難しかった。次に夜間睡眠の乱れの程度を自己相関関数を応用して算出し、この夜間睡眠の乱れの程度とテレビ・ビデオやインターネットとの関係を調べた。大学入学直後は、一人暮らしが始まり、友人とのコミュニケーションが盛んに行われる時期であり、友人との「おしゃべり」が、この時期の睡眠の乱れを促す主要な要因であるが、2年生以上になると、このような関係がなくなっていることが分かった。これに対して、入学直後には殆ど関係のなかった「インターネット」の利用が徐々に睡眠の乱れを促す要因として浮かび上がってくることが分かった。しかし、これらの時期を通して「テレビ」の視聴は「睡眠の乱れ」に対して殆ど影響を及ぼしていない。次に、睡眠の乱れと精神健康との関係について検討した。その結果、大学入学直後では、睡眠の乱れは精神健康と殆ど関係がないが学年進行に伴ってその重要性を増していくことが分かった。
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