研究課題
基盤研究(C)
このプロジェクトは、素朴生物学と素朴心理学の境界領域に関わる諸現象や諸特性を幼児がいかに理解しているかを調べることを目的に行われた。幼児に対する個別面接の方法を用いた一連の実験により、少なくとも次のことが明らかになった。(1)遺伝の影響と環境の影響に関して中間的な性質の特性、身体的・気質的、心的・気質的、身体的・能力的、心的・能力的特性を、幼児が区別できるかを扱った一連の実験から、少なくとも5歳の幼児では、これらの特性を、その長期的な修正可能性と修正できる場合の効果的な方略という観点から区別していることが明らかになった。身体的特性が遺伝的に決定されていることが多ければ多いほど、それを長期的に修正できないと判断するのに対し、心的・気質的特性と心的・能力的特性に対しては、どちらも修正可能と判断したが、心的・気質的特性は、心的・能力的特性とは修正可能性の方略が異なるという形で両者を区別していた。特性の保持が生得的であることを示唆する文脈情報や、特定の経験によることを示唆する文脈情報を与えた時でも、幼児は判断を変えようとしなかった。これらの結果から、幼児が、心的特性と身体的特性の性質について堅固な直観を持っていることが強く示唆された。(2)心因的な身体反応についての子どもの理解に関する研究からは、幼児(5歳児)だけでなく、小学生(7歳児)でも、ネガティブな心の状態が原因で、無意識に振る舞いが表れること(「心理的項目」への反応)や身体的に悪いことをしたことが原因で、身体に悪い症状が表れること(「身体的項目」への反応)は、小学生だけでなく、幼児でもよく理解していたが、心因性のことが原因で悪い身体症状が表れることについての理解は低かった。また、ポジティブな心の状態の方がネガティブな心の状態より病気の回復を早めるという考え方は、幼児、小学生ともに強く、大部分の者がこのように考えていた。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (2件)
Trends in Cognitive Sciences 8・8
ページ: 356-362
Trends in Cognitive Sciences Vol.8, No.8