研究概要 |
平成14年度は,複数の集団カテゴリーを交差させるという認知的操作が,元の集団カテゴリーや,交差されることによってできた新しい下位カテゴリーに対するステレオタイプ・偏見にどのような認知的効果,動機的効果を持つかを2つの実験を通して検討した.共通する独立変数は,内外集団を区別するカテゴリーかどうかというカテゴリーの自己関連性の有無と,カテゴリーを交差させるかどうかという認知操作の有無であり,主要な従属変数は,下位カテゴリーに対する評価であった.最小集団パラダイムを利用した実験(実験1)では,内外集団バイアスは検出されたが,交差カテゴリー化という認知操作のみの独自の効果は検出されなかった.現存民族集団と性集団を利用した実験(実験2)では,内外集団バイアスだけでなく,交差カテゴリー化という認知操作独自の効果が検出された.この効果は,元のカテゴリーよりも,交差されたカテゴリーに対する負の評価が増大するというものであった.これらの成果は,平成14年度の日本心理学会のシンポジウムで報告された.平成15年度は,これらの研究の問題点解決するとともに,これらの結果の信頼性を検討するために,最小集団パラダイムを利用した精緻化実験を行った(実験3).実験3では,実験2の効果が再現されるとともに,認知的操作の効果と内外集団バイアスの効果との関係が示唆された.これら3つの実験をまとめると,(1)単なる交差カテゴリー化という認知操作自体は,交差されたカテゴリーに対する負の評価を増加させる,(2)しかし,この交差カテゴリー化が内外集団の区別にかかわると,その動機的効果が凌駕し,交差カテゴリー化という認知的操作自体の効果は検出できなくなる,というものである.これらの成果は,平成16年度の日本社会心理学会のワークショップで報告される予定である.
|