本年度は13年度に行った調査について分析を行い、調査対象者の一部について、継続的な面接を行い、異動対象者のメンタルヘルスについて検討した。まず、調査対象は異動対象者186名でうち有効回答率は89.8%であった。その結果、(1)健康管理室による個人面談を「希望する」あるいは「今すぐではないがいつか相談したい」と答えたものが16.2%、(2)GHQ精神健康調査票の得点について、対象者の6割が精神的な不健康さを示す7点以上であった。以上のことから、今回の異動対象者がかなりの割合で精神的な不健康感を抱えていることが明らかとなった。さらに、属性別に検討した結果、(3)30〜34歳がそれ以外の年代よりも有意にストレスや不健康感が高く、この年代にもっとも負荷がかかっていること、(4)異動時期別には統計的な有意差はないことから、これらのストレスや不健康感は異動から時間が経れば解決するというわけではないこと、などが明らかになった。また、相関分析の結果から、(5)役割曖昧性や役割葛藤がもっとも異動後のストレスと関連すること、(6)量的過重感よりも質的な過重感がストレスと関連すること、などが明らかとなった。今回の異動者の場合、異動前の職務とまったく異なる職務を担当することが多いことから、異動に際しては、それまでのキャリアとの関連性や異動先の職場でのフォロー教育が重要であることが示唆された。さらに(7)個人要因は環境要因よりもストレスや不健康感との関連が低く、これらの結果が個人の問題というよりも、異動による環境の変化や環境の特性がもたらしたものと考えられた。一方、個人面接希望者およびGHQ高得点者計38名について、面接を行った。面接の結果により、21名はガイダンスで終了したが、その他には職場内調整2名、職場異動5名、休職1名、外部の専門機関への紹介2名という対応を行った。これらの結果は、経営行動科学学会第5回年次大会(2002年11月16〜17日於広島大学)「企業のリストラ施策実施時における従業員のメンタルヘルスに関する研究(1)(2)」として発表した。
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