本年度は14年度に引き続き、リストラクチャリング施策による異動後に行われたアンケートの調査について分析を行い、同時に、調査対象者の一部について行われた継続的な面接の経過を分析することにより、異動対象者のメンタルヘルスについて検討した。調査(分析対象者数162名)で明らかになった知見としては、14年度の分析による(1)健康管理室による個人面談を「希望する」あるいは「今すぐではないがいつか相談したい」と答えたものが16.2%と面談希望が2割弱に達していること、(2)GHQ精神健康調査票の得点について、対象者の6割が精神的な不健康さを示す7点以上であったこと、(3)30〜34歳がそれ以外の年代よりも有意にストレスや不健康感が高く、この年代にもっとも負荷がかかっていること、(4)異動時期別には統計的な有意差はないことから、これらのストレスや不健康感は異動から時間が経れば解決するというわけではないこと、(5)役割曖昧性や役割葛藤がもっとも異動後のストレスと関連すること、(6)量的過重感よりも質的な過重感がストレスと関連すること、などに加えて、重回帰分析の結果、(7)職場のメンタルヘルスには職場に馴れず、ちょっとした刺激に敏感であるといった異動後の心身のストレスが比較的強い影響を与えていること、(8)これらの異動後の心身のストレスは仕事の質的な過重感、役割の曖昧さ、受け入れ先の上司との関係不良が影響していることが明らかとなった。さらに(9)個人要因は環境要因よりもストレスや不健康感との関連が低く、メンタルヘルス不調は個人の問題というよりも、異動による環境の変化や環境の特性がもたらしたものであることが明らかとなった。介入方法としては、リストラクチャリング施策の一環であることを明確にし、そのリストラクチャリング施策の必然性や意義を説明する全体説明会、個別のキャリアとのマッチングを計るための個別面談、受け入れ先上司の理解などを検討した。これらの結果は報告書にまとめられた。
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