研究概要 |
「空間的視点取得では自己視点の心的回転が行われ,その処理速度は回転角度に対して一様でない」とした渡部(2001)を受けて,空間的視点取得における回転角度ごとの反応時間パターンをより精密に測定し,同様の結果が得られるかを確認することを目的とした.まず,実験装置の準備と制御プログラムの作成を行った.プログラムは,作成を依頼した業者との間でほぼ1年間にわたる調整を行って完成させた.こうして用意された機器を用いて実験が行われ,児童3名,大学生7名,高齢者3名に協力を依頼した.結果として,次の5つの成果を得た. 1.新たに考案した実験課題(実験装置ならびに制御プログラムを含む)は空間的視点取得能力をこれまで以上に詳細に測定することを可能にした 2.渡部(2001)の結果を検証した 3.年齢群間の結果の比較から「空間的視点取得能力は児童期よりすでに備わり老年期になってもほとんど衰えない」という画期的な示唆を得た 4.同じく年齢群間の比較から「老年期にみられる空間的視点取得能力の低下は他の空間認知能力や注意能力の低下によって説明できる」との仮説を得た 5.次年度以降に実験協力者を増やして結果の妥当性を高めることで,(3)や(4)の仮説を検証することが十分に可能であるとの手応えを得た
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