本年度は、枠組み文が形容詞1語から構成されるように材料を変更し、記銘語(ex.ぞう)と枠組み文( は小さい。)の関係が適合しない場合に、適合するように記銘語を修正する場合(ex.ぞう→あり)、枠組み文中の語を修正する場合(ex.小さい→大きい)における自己修正の効果を検討した。実験1〜4では、記銘語を修正する場合を検討した。実験1では、枠組み文のみを呈示する条件(呈示)、適合する語を生成する条件( は( )。)(生成)、及び記銘語を被験者自身が修正する条件(生成修正)を設定した。その結果、呈示<生成<生成修正という関係が示された。実験2では、修正語を実験者が呈示する条件(呈示修正)、生成及び生成修正条件を比較した。その結果、呈示修正<生成=生成修正という関係になった。生成と生成修正の有効性を直接比較するために、実験3ではこの2条件のみを設けて比較し、実験4でも手続きを変更して再度比較したが、両条件間に差はなかった。実験5〜8では、枠組み文中の語を修正する場合を検討し、設定された条件は実験1〜4に対応していた。その結果、生成修正=生成という関係は一貫しており、ともに呈示及び呈示修正条件よりも再生率が高かった。上記の実験はいずれも大人が被験者であったので、実験9では、小学2年生と6年生を被験者として、呈示、生成及び生成修正条件間の比較を行った。その結果、2年生では呈示=生成=生成修正、6年生では呈示=生成<生成修正という関係が示された。上述した実験から、文脈の適合性を認識でき、知識も豊富な大人では生成と生成修正間に有効性の違いはないが、適合性の認識がまだ充分でない6年生では修正することが記銘語を認知構造へ統合するのに有効な手がかりとして機能することが示された。また、知識が乏しい2年生では適合情報を生成させても、それが手がかりとして効果のないことが明らかになった。
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