本研究の目的は、就学前の子どもたちが自然生命体とどのように交流しているのかを人工疑似生命体との交流のあり方と比較分析することによって、自然な生命と交流することの発達的な意味を解明することにある。この目的のために、平成14年度に行ったことは、基本的にデータの収集である。場所は幼稚園で、観察対象は、全園児である。今年度行ったことは以下の5つの事柄である。(1)「参与観察」:幼稚園児たちが園の日常において生物(ザリガニ・ダンゴムシ・バッタ・チョウチョウ・亀・金魚・飼育小屋のウサギ)とどのように交流しそれらを媒介に互いにコミュニケーションしているのかを裸眼で観察しフィールドノートに記録した。(2)「ビデオ観察」:子どもたちが幼稚園において虫捕りをしているシーンや、飼育箱の虫やザリガニなどの世話をしているところや、飼育小屋のウサギや池の亀に餌をやっているところなどをビデオで録画を行った。これは裸眼での観察では捉えきれないコミュニケーションの細部を捉えるためである。(3)「ロボット犬と子どもの半実験的観察」:園の一室に作動するロボット犬を置き、年中児54名年長児52名をそれぞれペアで5分間自由に遊ばせ、その間の行動をビデオで録画した。(4)また、それらの子どもにロボット犬の「内的状態」をどのようにとらえているかについて個別のインタヴュー調査も行った。(5)ATRのロボット研究者と交流し、「関係発達論的インタフェース」研究開発プロジェクト主催の公開シンポジウム「ヒトとロボット:共同性とその発達的起源を探る」(2003.3.15 於:ATR地下会議室)に参加し、講演やポスター発表を行った。
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