本研究の目的は、就学前の子どもたちが自然生命体とどのように交流しているのかを人工疑似生命体との交流のあり方と比較分析することによって、自然な生命と交流することの発達的な意味を解明することにある。この目的のために、平成15年度に行ったことは、基本的にデータの収集と分析である。今年度行ったことは以下の8つの事柄である。(1)「参与観察」:幼稚園児たちが園の日常において生物(ザリガニ・ダンゴムシ・バッタ・亀・金魚・ウサギ)とどのように交流しそれらを媒介に互いにコミュニケーションしているのかを裸眼で観察しフィールドノートに記録した。(2)「ビデオ観察」:子どもたちが幼稚園において虫捕りをしているシーンや、飼育箱の虫やザリガニなどの世話をしているところや、飼育小屋のウサギや池の亀に餌をやっているところなどをビデオで録画を行った。(3)「ロボット犬と子どもの半実験的観察」:園の一室に作動するロボット犬を置き、年小児30名年中児22名をそれぞれペアで5分間自由に遊ばせた後、呼吸をしているかたたいたら痛いと感じるかなどを調べさせ、計8分間ほどビデオで録画した。(4)また、それらの子どもに、ぬいぐるみの犬の写真、アイボの写真、ドッグコムの写真、本物のウサギの写真などを見せて、それらの写真を「生きているか否か」「痛いと感じるか否か」など分類させ子どもの認識を探る調査を行った。(5)年長児42人年中児42人年少16人にアイボで8分間ほど遊ばせ、アイボが喜んだり嫌がったりするのか調べさせる実験も行った。(6)また、その子どもたちに、ウサギのビデオや、ねじで動く玩具の犬を見せ、それらが「生きているか否か」「喜んだり嫌がったりするのか」ということについても調査を行った。(7)昨年度の実験によるビデオデータの再分析・再カテゴリー化を行った。
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