本研究の目的は、就学前の子どもたちが自然生命体とどのように交流しているのかを人工疑似生命体との交流のあり方と比較分析することによって、自然な生命と交流することの発達的な意味を解明することにある。この目的のために、平成16年度に行ったことは、3つある。(1)「ロボット犬と子どもの半実験的観察(III)」:園の一室に作動するロボット犬を置き、年長児42名年中児42名をそれぞれペアで、ロボット犬が「嫌がったり」「喜んだりするか」を調べるように教示して10分間ほど自由に遊ばせた。その後、ゼンマイで歩く玩具の動物やビデオに写した現実のウサギなどと対比させ、それぞれが「生きているか」、「喜んだするか」などを子どもたちに解答させた。データは現在分析中である。(2)1年目に行った「ロボット犬と子どもの半実験的観察(I)」(年長と年中が対象)データを分析し、それを論文の形にまとめ、ほぼ投稿できる状態にまとめつつある。音声を発しないアイボとことばを発するドッグコムとに対して、子どもたちが口頭では同じような認識を示すのに。行為の上では、かなり異なった行動を示すことが判明した。2年目に行った同様の「半実験的観察(II)」(年中と年少が対象)を論文にまとめた。これは京都国際センター紀要「発達と療育」に掲載されている。アイボに対して子どもたちが「生物」と「非生物」との中間物として分類しがちなことが判明した。(3)これまでの園児たちの虫に対する観察データの一部をまとめ、「虫の命」をもて遊ぶことが、サディズムと好奇心と同情を介して、真の共感につながっていく可能性を論じた(2005年度の発達心理学会で発表予定)。
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