本研究の目的は、就学前の子どもたちが自然生命体とどのように交流しているのかを人工疑似生命体との交流のあり方と比較分析することによって、自然な生命と交流することの発達的な意味を解明することにある。この目的のために、平成17年度に行ったことは、大きく分類して2つある。 1つは、幼稚園児のデータを補足するために大学生で実験を行った。幼稚園での実験はアイボと短期間のインタラクションしか設定できなかった。大学生で長期間(1週間)のアイボとの交流が、現実の動物ペット(犬猫)との1週間の交流とどのように異なるのか、あるいは類似するのかを調べるために、新たな研究を行った。12名の研究協力者を得て、1週間アイボを家で飼ってもらい毎日日記を書いてもらった。また事前、事後のアンケートやインタビューも実施した。また、対照群として犬猫を飼っている協力者15名の同様の飼育日記を書いてもらい、その内容の比較も行った。疑似人工生命体であるロボットに対する「感情」や「態度」に、自然なペットに対しては表れない「感情」や「態度」があることが明らかになった。 2つめは、この4年間で行ってきた研究を総括するために、集めてきた観察や実験データを分析し、論文にまとめる作業をおこなった。特に16年度に行った、「ロボット犬と子どもの半実験的観察」データを分析すること、と幼稚園で継続して行ってきた生物との交流について、まとめる作業もおこなった。昆虫やウサギなどの小動物への関わり方の観察から得られた知見を、アイボのデータと理論的に総括する方向性を得るのために、文献学的な研究、理論的な研究を行った。これらは、冊子体の研究報告書にまとめた。
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