本年度は、以下の三つの目的に沿って、研究を行った。 まず第一に、組織認知と相互作用の視点から、1990年代以降に発表された学校組織における意思決定とリーダーシップに関する先行研究を収集した。そして、最近の研究動向について検討するとともに、自律的な学校経営の視点から、学校組織において、求められる新たな意思決定とリーダーシップの機能の在り方について理論的に明らかにした。研究成果については、「リーダーシップの社会心理学」(ナカニシヤ出版)に著書としてまとめた。また、研究成果については、日本教育経営学会と日本教育心理学会において発表した。今後は、管理職を中心としたリーダーシップ研究についてまとめる予定である。 第に、教師を対象として、学校組織における教師集団の関係性尺度を作成し、教師集団の特徴について明らかにし、教師間の協働関係を促進する要因の一つである教師の有能感に注目して、学校組織を視野に入れた教師の効力感尺度を作成し、さらに、教師集団の関係性を促進するコミュニケーション要因と阻害する対人葛藤関係尺度を作成した。研究成果については、岡山大学教育学学部研究集録、日本教育心理学会、日本グループダイナミックス学会において発表した。今後は新たに作成した尺度を用いて、学校組織における効果的な意思決定とリーダーシップが教職員に及ぼす影響について、具体的に検討する。さらには開かれた学校組織と強い視点から、最近注目されているスクールカウンセラーと教師の協働関係の在り方についても明らかにする。 第二に、学校改善を試みている学校を調査対象として、参加観察法と面接法により、学校改善のための意思決定システムと校長のリーダーシップに関する基礎的データを収集した。研究成果については、教育経営学研究にまとめた。
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