研究課題
基盤研究(C)
本研究では、環境問題に対する対処行動意図である環境配慮的行動意図を改善するための説得技法の開発を目指して、環境配慮的行動意図の規定因を解明する基礎的研究を、深田・戸塚(2001)の集合的防護動機モデルの枠組みから行った。集合的防護動機モデルは、環境配慮的行動意図が8つの認知要因(脅威の深刻さと生起確率、対処行動の効果性とコスト、対処の責任と実行能力、実行者割合と規範)によって規定されると仮定する。研究1では、日本人大学生を調査対象とし、規範認知を除く7つの認知要因が環境配慮的行動意図に影響を持つことを実証した。特に、実行能力認知の正の影響とコスト認知の負の影響が顕著であった。環境配慮的行動意図に対する集合的防護動機モデルの予測力はR^2=.43〜.66と高く、モデルの妥当性が証明された。研究2では、日本人大学生を実験参加者とする説得実験によって、脅威評価要因(深刻さと生起確率の合成変数)と対処評価要因(効果性とコストの合成変数)が男女大学生の環境配慮的行動意図を促進することを明らかにした。研究3では、中国人大学生を調査対象とし、環境配慮的行動意図に対する集合的防護動機モデルの予測力は、R^2=.20〜.42と幾分低いことが示された。研究4では、日本人大学生を調査対象とし、集合的防護動機モデルの予測力と広瀬(1994)の環境配慮的行動と規定因との要因連関モデルの予測力のほうが、小池ら(2003)の行動に至る心理プロセスのモデルの予測力よりも高いことを実証した。研究5では、中国人高校生・大学生・成人女性を調査対象とし、研究4と同様の3モデル間の予測力を比較する研究を行ったところ、全体的な予測力は研究4の結果に比べて低かったものの、いずれの対象者群においても、研究4と同様の結果が得られた。以上のように、環境配慮的行動意図を改善するための説得技法として、集合的防護動機モデルの枠組みが有効であることを解明した。
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実験社会心理学研究 44(印刷中)
Japanese Journal of Experimental Social Psychology Vol.44(in press)
広島大学大学院教育学研究科紀要 第三部 51
ページ: 229-238
Bulletin of the Graduate School of Education, Part 3(Hiroshima University) Vol.51