研究概要 |
本研究は,幼児間の利害や意見の対立あるいは不一致が生じている対人葛藤場面で,他社に対する怒りや嫌悪,悲しみなどの感情を社会的に容認される形で処理する幼児の感情処理能力の育成と,保育者の支援のあり方を行動レベルで明らかにすることを目的としている。 本年度は,まず,対人葛藤場面での幼児の行動と保育者の支援行動を類型化するために,行動観察を行った。年少,年中,年長の3学年からなる附属幼稚園の協力を得て,行動観察を行った。行動観察が冬季に行われたため,継続的に複数の幼児が一緒に遊び,相互交渉が生じやすく,ビデオ・カメラの設置が可能な場所として,遊戯室を選択した。遊戯室2ヵ所それぞれにビデオ・カメラを固定し,それぞれ1日につき9時からと11時からそれぞれ90分間,計180分間の行動を,4週間に渡り記録した。 現在分析の途中であるが,いくつかの特徴と,データ収集上のいくつかの問題点が明らかになりつつある。まず,年中児では,道具の取り合いやごっこ遊びでの身体的接触などから怒りの表情を一時的に見せるが,直後に泣くのを我慢するといった形で,悲しみの表出抑制をすることが多い。ほとんどの場合,保育者が支援する前に,同年齢児が当該児たちの主張を聞いたり,なだめたりして,葛藤場面は収束する。年長児では,言語的やりとりが中心となり,また同年齢児の介入が早く,急速に葛藤が解消する傾向にある。しかし,年少児の記録が少なく,また同年齢児間で葛藤を解消するため,保育者の支援もあまり多く記録されていないので,補足データの収集が必要である。
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