研究概要 |
本研究は,「単位」の萌芽的概念が面積(大きさ),長さなどの量に関する判断において,どのように形成され,それが子どもにおける数学的思考の発達とどのように関わっているかを検討した。具体的に,面積と長さの比較に関して,幼児期の子どもがどのような外的な手がかりや操作(方略)を自発的に利用するのか,そして,その利用が発達とともにどのように変化するのかを調べた。 本年度は,3歳から6歳の幼児を対象に,2人の登場人物の間で対象物(クッキーに見立てた図形8枚)を等しく分配するという課題を実施した。ただし,分配する対象物に関して,以下の条件を設定した。1.対象物の大きさがすべて等しい条件,2.対象物の大きさが大きく異なる条件(直径5cmと9cmの円),3.対象物の大きさがやや異なる条件(直径7cmと9cmの円)。 その結果,4歳半以降の幼児は,数と量の両方に注目して配分を行うことができることが分かった。すなわち,4歳半以降の幼児は,上記2と3のような対象物の大きさが異なる条件でも,異なる大きさの対象物が2人の登場人物間で等しくなるように分配しようとした。しかし,5歳半以前の幼児は,一方の登場人物に何枚か配分した後,残りを他方に分配するといった方略が多かったため,必ずしも等しい量の分配ができなかった。他方,4歳半以前の幼児は,対象物の大きさに注意を払うことができなかった。以上のことから,3歳から6歳の間に「単位」に関する理解が質的に変化することが示唆された。
|