研究概要 |
本研究は,「単位」の萌芽的概念が面積(大きさ),長さ,容量などの量に関する判断において,どのように形成され,それが子どもにおける数学的思考の発達とどのように関わっているかを検討した。具体的に,3つの実験を通して,1.量の多少を比較するとき,比較する基準(「単位」)が同じでなければならないという基本的な原理についての理解が3〜6歳の時期にどのように発達するのか,2.幼児が量の多少を判断するときに使用する知識と方略の使用の発達的変化が,「単位」の萌芽的概念の形成,数学的思考の発達とどのように関わっているのか,を調べた。その結果,3〜6歳の幼児において,以下のような発達的な変化が生じることが示唆された。1.3歳児は,面積などの量を2等分するとき,面積を細分し,細分した個体を,数に関する方略によって均等に分けようとした。すなわち,数の知識によって量を把握しようとする傾向が強かった。ただし,細分した個体の大小に注意を払わなかった。2.4歳半ごろから,量を2等分するとき,半分という単位で量を捉え,刺激を直接2分する反応が増加した。すなわち,分割した個体の量に注意を払うようになった。しかし,4歳児では,分割する量を知覚的に捉える傾向があるため,例えば,誤った手がかりを与えられると,それに惑わされ,正確な量の判断ができなかった。3.5歳半ごろから,量の大小を判断するための道具として,重ね合わせの自発的使用が増加した。また,重ね合わせの使用は,その認知的道具の内化を引き起こし,また,内的に重ね合わせることで,量の2次元的な判断が促進された。
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