本研究は、学校卒業後の自閉症者の職場、施設での適応状況を調査し、支援的側面から実態の詳細を明らかにすると共に、自閉症者の就労を実現するためには学校教育でどういう指導内容、指導方法が必要か、検討しようとするものである。14、15年度は、企業就労者373名、授産施設で働く171名を対象に調査し、就労の実現と就労維持要因を検討し、次のような知見が得られた。 1.企業就労者の検討 (1)3年を超えて就労を維持するのが難しい。3年間をどう乗り切るかが課題である。(2)就労維持は知能程度に左右されない。(3)全体の85%の者が職場適応が良好である。(4)入社時期と比べて仕事の量・質共に大幅に向上している者が70%近くいる。(5)一般従業員以上の仕事ができる者が20%いる。 2.授産施設在所者の検討 (1)施設での適応状況は多様で、適応できている者からいない者までいる。在所年数による有意差はない。(2)不適切行動の改善が最大の課題となっている。パニック、こだわり、常同行動のいずれかは、ほとんどの利用者が持っている。(3)作業内容は単純で、手先を使った反復的な簡易作業がほとんどである。(4)身辺自立に問題を持つ者が多い。(5)平均賃金は1万499円で、1万円以下の者が75%いる。(6)作業時間は1時間から8時間まで幅広い。平均6時間である。(7)就労を実現した者はいない。
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