本研究は、学校卒業後の自閉症者の職業生活、施設生活の適応状態を把握し、支援的側面から実態の詳細を明らかにすると共に、自閉症者の就労維持のためには職場に対しどういう支援が必要か、また、福祉的就労の人が企業就労を実現するためにはどういう課題をクリアしなければならないか、さらには就労自立を果たすためには学校教育でどういう指導課題を、どんな方法で、どんな順序で指導すればよいか、を検討した。具体的には全国の青年・成人期の自閉症児・者768名(企業就労者373名、福祉的就労者171名、学齢児童生徒224名)を対象に調査し、次の3点を明らかにした。 1)企業就労している自閉症者(373名)の職場適応状態を調査し、適応上の課題を明らかにすると共に就労要因、就労維持要因について考察した。 2)授産施設、作業所で働く自閉症者(約171名)の施設適応状態を調査し、福祉的就労現場の課題を検討し就労実現のための方策について考察した。 3)両群から得た結果を分析、考察することにより、自閉症者の就労の拡大を図るための指導プログラム(就労のために最小限必要な指導内容、指導項目を示したもので、800の指導課題項目を整理している)を作成した。この指導プログラムは6歳から18歳までの自閉症児224人を対象に実態調査して、指導課題項目ごとに発達年齢別の通過率を算出し、最適指導年齢を明らかにしたものである。
|