研究概要 |
本研究では,軽度発達障害児(LD, ADHD,広汎性発達障害児など)や障害児を含めたすべての子どもの小学校入学時の適応に際して,学校関係者,福祉関係者,そして保護者の間でどのような連携が有効かつ必要なのかを検討した。 まず,アメリカの公立小学校の視察により,軽度発達障害等の疑いのある子どもについて,日本でも小学校入学前後の関係者・機関の間での情報共有を図り,文書化された情報にもとづいて連携を進める必要があることを明らかにした。その際に,保護者のサポートについては,学校側もその重要性を十分に認識するとともに,療育機関,幼稚園,保育所などの諸資源と連携する必要がある。特に,保護者の情報取得や心理的サポートにおけるアンカーポイント(周囲の環境との相互交流を促進する機能をもつもの。例:療育機関職員,保育士など)に注目することの重要性を,母親面接により明らかにした。 他方,現在,各学校は特別支援教育の大きな変革期にあって校内体制を整備しつつあるが,例えば校内委員会の設置はまだ半数にも満たず,不十分である実態が調査によって明らかになった。さらに設置の有無によって差があるのは,在籍する児童の理解や処遇の一部であり,小学校入学時の新入生受け入れ態勢もすべてにわたって違いが見られるわけではなかった。早期発見早期教育の観点から,今後の取組の進展が必要である。 具体的な校内体制づくりの事例として,一つは新入学児童理解に関する資料の収集・整備の方法を検討した。これは,軽度発達障害等の疑いのある子どもについての情報共有の重要性に着目し,個表という具体的なツールを用い,校内体制整備によってその活用を試みた事例である。また,別の事例では地域としての推進体制構築過程での幼稚園と小学校の連携によるサポート・システムづくりを行った。具体的な成果としては,新入生受け入れに際しての教員配置の工夫などがあげられる。
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