研究概要 |
1.作業記憶の検査バッテリーである「スワンソン認知プロセス検査」の日本語短縮版を試作した。 2.国内外における音韻意識に関する文献を収集し,その研究動向を探り,日本語の特質も考慮して音韻意識のスクリーニング検査を試作した。 3.以上の1〜2を踏まえ,スワンソン認知プロセス検査日本語短縮版と音韻意識スクリーニング検査試作版(音韻削除課題および無意味音節復唱・逆唱課題)を小学校4年生の健常児にパイロットスタディーとして実施し,データを収集した。 4.同時に,同様に学習障害のあるこどものデータを並行して収集した。 5.結果については現在分析中であるが,以下の点が明らかとなった。 (1)健常児の作業記憶検査の成績は個人間で差が認められるが,学力との相関は有意ではなかった。 ⇒この点については,作業記憶得点の細分化,学力検査の下位項目との比較など,更なる分析を予定している。 (2)健常児において,音韻意識課題の成績は100%ではなかった。読み書きに障害のない健常児でも音韻意識課題の種類によっては困難な場合もあることが明らかになった。 ⇒音韻意識課題の妥当性を再検討し,さらにデータを収集する予定である。 (3)学習障害児では,作業記憶検査の成績に特徴的なパターンが見られる場合があった。 (4)学習障害児の音韻意識課題の成績は,症例数は少ないが,健常児との大きな差は認められなかった。 ⇒今後症例数を増やしてさらにデータを収集し,健常児と比較検討する予定である。 7.今後の予定:作業記憶検査に関して健常児の得点をZ得点化した上で,学習障害児の成績をその中にプロットして比較し,学習障害児の作業記憶の特徴を捉える。成果は特殊教育学会での発表を予定している。
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