研究概要 |
病理の程度と性質(病態水準)に応じたイメージ治癒過程・治療過程の特徴を明らかにすることを目的とし、本年度は以下の研究を行った。イメージ治癒過程をどのような視点から捉えるかということが重要であり、報告者はイメージ治癒過程においては、「イメージ内容」すなわち「どんなイメージが浮かんだか」ということだけでなく、そのイメージを「どのように浮かべ体験したか」という「イメージの体験の仕方(体験様式)」と「安全弁」という視点を重視し、イメージ体験評定用紙(濱田・松本・田嶌,1997)、イメージ体験様式理論(田嶌,1987)および体験過程尺度(Kline et al.,1970)、イメージ療法適用事例報告(田嶌,1987;他)等を参考にして、イメージ体験を測定する評定尺度(「イメージ体験評定尺度」)を独自に作成した。 これを用いて、本年度は主として健常水準および神経症水準の事例の分析を行った。著明な効果をあげた事例では、いずれにおいても報告者のいうイメージ拒否・拘束、イメージ観察、イメージ直面、イメージ体験、イメージ受容という過程を経ていることが確認された。神経症水準の事例で10数回〜数十回で起こったのと同様の過程が、健常水準の事例では1回〜数回で生じているという違いがあることも明かになった。 また、動作法とイメージ面接を適用した事例について分析し、その治癒過程から、(1)現実感覚的身体、(2)主観感覚的身体(3)トランスパーソナル身体というそれぞれ性質の異なる三種の身体とそれに伴うイメージと実感が重要であることを論じた。さらにこの視点から、一見イメージとは関連がないように見える動作法においても現実感覚的イメージが重要であることを論じた。 次年度はさらに、境界例水準や精神病水準などのより重篤な水準の事例について分析を行う予定である。
|