研究概要 |
本研究の目的は,幼児期の子どもを対象に感覚運動的・認知(意味)的協同構成過程おいて,思考のリズムと動作のリズムの相互作用の内実と,その思考と動作のリズムを媒介にした自-他間での協応過程ならびに制御過程に認知と情動がどのような構造をもって機能しているのかについて明らかにすることである。このうち,平成14年度は,課題のリズム特性(の有無)が,(1)子どもの感覚運動的,認知的リズムの再生過程に及ぼす影響と(2)動作パターンの模倣過程に及ぼす影響について検討を行なった。(1)については,平成11-12年度科研費(基盤研究C)で用いた感覚運動的・認知的リズム再生課題のうち,今回は特にリズムの知覚と変換操作の要素を持った条件(inversion)に焦点を当て,自分の身体を操作すること(太鼓の打音など)と対象を操作すること(2色のブロック配列など)の違いによってリズムの再生過程にどのような差異が見られるかについて検討を行なった。リズム再生の過程分析を行なった結果,課題間での差は見られるものの,全体的には,一定のリズムを知覚しその順番を逆に変換しながら再生(inversion)することは,自体操作課題よりも対象操作課題の方が容易であることが示唆された。つぎに(2)については,リズム的要素を含まない単純なポーズをとったモデルのとおりに模倣する課題を設定し,そのモデルが実際に人である場合と紙に描かれたモデルである場合とで,子どもの模倣プロセスや程度にどのような差異が見られるかについて検討を行なった。過程分析の結果,モデルの違いによって子どもの模倣の仕方は大きく異なり,自然な模倣動作の形成は実際の人のモデルに向かった方が容易であることが示唆された。以上2つの知見を踏まえて,自体操作的特性を持つ動作模倣の形成と対象操作的特性を持つリズム再生との発達的な関係性を明確にしていくことが次年度以降の検討課題のうちの一つとなった。
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