研究概要 |
本研究の目的は,幼児期の子どもを対象に感覚運動的・認知(意味)的協同構成過程おいて,思考のリズムと動作のリズムの相互作用の内実と,その思考と動作のリズムを媒介にした自-他間での協応過程ならびに制御過程に認知と情動がどのような構造をもって機能しているのかについて明らかにすることである。平成15年度は,平成14年度の結果を受けて,(1)思考のリズムと動作のリズムの発達特性について,表現されたものとしてのリズム(リズムの対象化)と運動としてのリズム(リズムの行為化)の関係について4歳児〜6歳児を対象に検討し,(2)関係の枠組を「子ども-課題」間から「子ども-課題-他者」間へと拡げ,課題構造としてのリズムと他者とのやり取りとしての相互交渉リズムの機能について5歳児を対象に検討することであった。(1)については,平成14年度に使用した課題のうち,認知的リズム課題(ブロック配列課題,機織り課題)を用いて検討し,全体的な傾向としては,対象化されたリズムの方が,行為化としてのリズムよりも再生が容易であり,その傾向はリズム構成が複雑になるほど顕著であった。(2)については,折り紙課題を用いて,折り図の内容理解について大人からの言葉と動作による構造的な援助的介入を受けた後で,同一の操作の組合せを複数回反復する(リズミカルな)要素とそうでない要素での子どもの構成行為を比較した。その結果,リズミカルな構成要素の力所の方が,そうでない構成要素のカ所に比べて,折り図を見ることと折り紙を折ることとの対応関係を調整することが困難であり,構成エラーも多いことが示唆された。 以上より,次年度(最終年度)は,特に(2)の結果を踏まえて,課題構造としての(認知的な)リズムと「大人-子ども」の関係から「子ども同士」の関係に移った際の相互交渉リズムとの関係について,課題遂行中の協応と制御に関わる認知-情動の影響過程も含めて検討することが検討課題である。
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