祖母と孫の関係が系譜、孫の性、および地域によって異なるかどうかを検討することが主な目的であった。そこで2つの分析がなされた。1つは、東京とソウルの孫が認知する祖母との関係について、とくに祖母役割および祖母支援規範が分析された。2つ目は、東京と沖縄の祖母を対象に孫との関係、とくに祖母役割の自己評価が分析された。 まず、東京の孫(392人)はソウルの孫(395人)より、「伝承的」「しつけ的」「安全基地的」「家事的」祖母役割すべての因子、および祖母支援規範を高く報告した。しかし「伝承的」および「しつけ的」祖母役割では地域と系譜の交互作用が有意となった。すなわち、「伝承的」祖母役割はソウルで父方祖母が母方祖母より高く評価され、「しつけ的」祖母役割は逆に東京で母方祖母が父方祖母より高く評価された。祖母支援規範も東京よりソウルの孫は高く報告したが、地域と性の有意な交互作用があり、東京で孫息子が孫娘より低い規範を示した。地域と系譜の交互作用は有意でなかった。 第2の研究は、東京(178人)と沖縄(158人)の祖母が果たしている役割の自己評価について分析した。その結果、いずれの地域でも、祖母は、孫息子の場合には息子方の、孫娘の場合には娘方の孫に対して、祖母は「伝承的役割」および「家事的役割」を強く果たしていることを自己評価した。 以上、2つの分析結果から孫と祖母の関係が文化的背景によって異なることが示唆されるが、標本数の少ないことから、比較文化的考察や居住形態の違いなど今後に問題を残した。
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