本研究の目的は、祖母と孫の関係が社会的文化的背景によって異なることを明らかにすることであった。日本(東京および沖縄)と韓国(ソウルおよび郊外)における祖母と小学生孫を対象に、質問紙法により次の8点を明らかにした。 1:いずれの国においても祖母と孫が共通に認知する祖母役割がある。すなわち、「伝承」「社会化」「安全基地」「家事」の機能である。2:祖母役割は東京<沖縄<韓国の順で高く評価された。3:沖縄の祖母は、孫息子に対しては娘方より息子方の、また孫娘に対しては息子方より娘方のほうに、「伝承的」および「家事的」役割を果たしていると自己評価した。4:父方祖母の「伝承的」役割を、ソウルの孫は高く評価するが、逆に東京の孫は低く評価した。また東京の孫は父方祖母の「社会化」機能も低く評価した。5:祖母は孫との親密な関係によって自己の人格が発達すると認知した。6:祖母がちょっとした支援を必要とするとき、祖母自身が孫に支援を期待する度合い、および孫が支援の義務を感じる度合いの一致度は、東京では独立であるのに対して、ソウルでは正の相関が得られ、祖母が孫に援助を期待するほど孫も祖母を援助しなければならないという規範が強いことが明らかになった。7祖母役割と祖母援助規範の関係は東京とソウルで異なる特徴を示した。すなわち、ソウルでは祖母だけでなく孫も祖母の「社会化」機能を高く評価するほど祖母への援助規範が高かった。8:祖母役割と祖母のwell-beingとの関係は、ソウルで、祖母自身が「社会化」機能を高く評価するほどWell-beingが高かった。 得られた結果は、kinship理論および儒教文化論によって説明された。
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