研究概要 |
数唱課題や「今ここへの注意の配分」といった認知指標がPTSD者が高ストレス者や健常者と異なるかを調べる目的で、健常群として大学生12名(男女比=6:6、M=26.3歳)、高ストレス群として大学生9名(男女比=1:8、M=20.3歳)、PTSD群として地域からのボランティア9名(男女比=2:7、M=34.1歳)の3群を設定した。高ストレス群とPTSD群はいずれもIES-R得点が25点以上だが、先行する出来事がDSM-IVのAの基準を満たすかどうかで分けた。IES-R, BDIともに、群によって平均得点が異なり、IES-Rでは、PTSD群、高ストレス群、健常群の順に得点が高く、BDIでは、PTSD群が高ストレス群、健常群よりも得点が高いが、高ストレス群と健常群の間に差はなかった。臨床高次脳機能評価マニュアルの数唱、逆唱得点及び、WAIS-R数唱得点において、群の効果が有意で、WAIS-R数唱得点および高次脳機能評価の数唱得点、逆唱得点はPTSD群の方が、健常群、高ストレス群と比べて低かったが、健常群、高ストレス群間に差はなかった。高次脳機能評価の順唱得点では、PTSD群が健常群よりも低い結果となったが、PTSD群と高ストレス群、健常群と高ストレス群の間に差はなかった。解離を調べる「今ここへの注意の配分」の注意指標で現在への注意の%に関して一元配置分散分析を行った結果、群間の%の値に差が見られ、健常群、高ストレス群、PTSD群の順に高かった。 PTSD群に対して、3セッションからなるEMDR治療を施した。SUD, VOC, IES-Rの侵入や過覚醒,STAIの指標で改善が確認された。WAIS-Rの数唱、「今ここへの注意の配分」において、治療前と比較しで、治療後の得点が有意に上昇するという結果となった。臨床高次脳機能評価マニュアルの順唱と逆唱では、前後で差がみられなかった 3群間の等質性にやや問題はあるが、これらの認知指標がPTSD症状をよく反映している可能性が示唆された。
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