研究概要 |
平成15年度は3つの研究を行なっている。 第1は、ろう学校で具体的に知能検査がどのように実施されているか聞き取り調査を行なった。指文字と手話を主たるコミュニケーション手段としたトータルコミュニケーション教育を行っている奈良県立ろう学校教員の協力によるものである。聞き取り調査の結果、WPPSI(Wechsler Preschool and Primary Scale of Intelligence)の言語性検査実施に伴う問題点を明らかにすることができた。これによって聴覚障害児を対象とした知能検査作成の具体的な作業課題がある程度明確にされた。 第2は、WISC-III(Wechsler Intelligence Scale for Children-Third Edition)の動作性検査の中から、従来聴覚障害児(ろう学校生徒)で得点が低いとされている絵画配列および符号問題を取り上げ、学年別(小3,小6,中2)にどのような特徴があるか調べた。その結果、絵画配列は聴児(標準化群)と有意差がないことが明らかにされた。一方、符号問題は学年が上がるにつれ得点が低くなること、しかも手話を使用しない生徒にその傾向が多くみられた。このことから、手話をコミュニケーション手段とすることの意義が示唆された。 第3の研究は、WISC-IIIの動作性検査の手話翻訳版作成である。聴覚障害児を対象に知能検査を実施する場合、対象児のコミュニケーション様式やコミュニケーション能力に応じて柔軟に対応していかなければならないが、手話を導入することは意義あることと考えられる。その場合のひとつのモデルとなる手話翻訳版を作ることができた。
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