研究概要 |
英語圏、また日本においても子どものphonological awareness(音韻認識能力)とreading developmentには強い関係があると報告されている。しかしながら音韻認識能力自体についての研究は少なく、第二君語における同様の研究はさらに少ない。音韻認識能力の言語転移問題については、研究もやっと始まったばかりである。本研究は4つの調査を通して第二言語(英語)における音韻認識能力の実体を探った。 最初の研究では、仮説「第一言語における音韻識別能力が第二言語の音韻識別能力の発達に影響を及ぼし、それに知能も関連している」を検証するため2つの調査が行なわれた。実験1では日本語と英語の音韻認識能力の転移について幼稚園児,および小学校1年生222名を対象に、英語と日本語の音韻に関するテストを実施した。また、実験2はその参加者中115名の知能を測定し、言葉の音韻認識能力と知能との関係も探った。structural equation modelingの使用を試みた結果、日本語から英語への音韻認識能力の転移、さらに日本語の音韻認識能力に対して知能が関与していることが示唆された。 次の研究では、さらに英語の音韻認識能力を細かく分析するため、中学1年生94名と小学6年生131名の計225名に最初の音の聞き分けと最後の音の聞き分けテストを実施した。この調査から音節内部構造を分節する際、日本人の学習者も個別の音素を聞き分ける前になんらかの音を認識する単位をもっていることが明らかになった。英語の母語話者はonset-rime単位で音節を分節するが、「日本人学習者は音節の内部構造をonset-rimeに分節するのではなく、モーラ単位で分節するのではないか」という仮説を検証し、その妥当性が明らかになった。さらに第二言語での音韻認識が読み能力に影響していることも示唆された。
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