1。動物進化について未習の小学校5年生を対象に、彼らがヒトやサルという種の出現をいかに概念化しているか、突然変異と生態学的環境への適応というメカニズムをどのように理解しているかを調査し、学習の初期状態を明らかにした。また、短期の介入による概念変化の検討を行なって、小学生は生物学的現象に対し、目的論的、生気論的、本質論的因果を用いるため、進化のある側面は理解されやすい(動物の身体の構造や機能はその生態学的環境に適合するよう少しずつ変化する、など)が、他の側面は理解が困難である(突然変異と適者生存の原理により新しい種の動物が生まれる、など)ことを確認した。さらに、進化を扱った内外の先進的な教育プログラムの文献調査により、どのような接近が理解、概念変化、適応的熟達化のために有望であるかを明らかにするとともに、適応的熟達化の認知的および動機づけ的諸原頓に基づき、進化についての「適応的」知識を獲得させる教育課程の素案を構成した。 2。昨年度の分数と同様な手続きを、中学校2年生に対し、関数について進める予定であったが、これについては、研究分担者の海外出張などのため、必ずしも顕著な成果が得られなかった。しかし、手続き的知識と概念的知識の対応づけを中心に検査項目を作成し、予備調査を行った。また、これと関連して、経済現象という「応用的」分野での関数の理解が、より数理的な分野でのそれとどのように関連するかを検討した。 3。大学生、大学院生を対象とする文化心理学の授業を適応的熟達化の諸原理にもとづいて組織化する可能性を検討した。
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